デヴィッド・ボウイの『∞』 -赤い風の吹く赤い星
えっ
12インチシングル『★』、めっちゃいい。
とくにわたしのようなものにとって、良いのでは。というのは、ジギーのファンであったわたしは、いえ勿論頭では理解していつつ、ボウイは死なないだろと。マイヒーローであったが故、どうしても生身の死と結びつかない。
ボウイのファンを名乗るのはおこがましいけどジギーならめっちゃファン、という状態の人間がその訃報に触れて大変なショックを受け、ボウイという人間を振り返ろうとし、だがしかしボウイ=ジギーの認識であるため受け入れられない曲もあり‥大混迷。
DAVID BOWIE isを経て、なんだか腑に落ちた感があります。人間デビット・ボウイの一部としてのジギー・スターダストに。火星人としての別人格というコンセプトに。そのアイディアの素晴らしさと全うすることの大変さに、想像が追いつくようになった。別の人間を演じきる困難からくるストレスが、Aladdin Saneに出ているような気がする。そしてそのアラジン・セインの成功から、ジギーが再発見され、わたしのとこまで届いたんだね。
ハンキー・ドリー、ザ・ネクスト・デイは、よく聴いた。死んじゃったぁの悲しみと、好みの楽曲の喜びと。でもブラックスターは早いような気がして、未聴だったから。今回、回顧展の記念としてボウイに触れるのにこのシングル、丁度よかった。
デザインもいい。ちょっと透ける赤いカラー・ヴィニール仕様のレコードに、それぞれの曲を表すロゴ。ジョナサン・バーンブルック、展示映像のインタビューにも出ていた。ヒーザン以降ずっとボウイのアルバムデザインを手がけてきた人だそう。勿論、あのThe Next Dayもこの人。
黒が喪になってしまったならさ、赤は馳せる想いかもね。
回顧展をやったロンドン、パリ、メルボルンそれぞれ、独自の限定レコードを発売したらしい。ロンドンでは『アウトサイド』などのアナログLP、パリでは編集盤『アイセレクト』のLPとヒーローズのフランス語版シングルの復刻。メルボルンではレッツ・ダンスのカラー・ヴィニールのシングルだって。
日本限定盤は、★のフルレングスバージョンと、ラザルス、アイ・キャント・ギヴ・エヴリシング・アウェイのラジオエディットバージョン。真髄だろうし、アルバム知らなくても聴きやすい。一年、経ったんだね。
天王洲アイルとぉーい、チケットたかーい、映像中心疲れるユーチューブみればぁに打ち勝って行って、よかったです。一見とっ散らかった展示内容が、経験として自分の中に根付く。
行く途中に日本画の画材屋さん、岩絵具などを扱うオシャレショップがありました。「PIGMENT(ピグモン)」、運営はデヴィット・ボウイ大回顧展会場と同じ寺田倉庫。内装は隈研吾。目を引くデザイン。扱っているものも、日本ブランドの良質さにこだわっているそう。岩絵の具は天然の石を砕いた顔料なので、こうして瓶に詰めると宝石のようなきらめき。膠も、いろんな種類がありました。綺麗な、色。並んで。
岩絵具、膠、右は固形水彩絵の具「パンケーキ」。つなぎがハチミツなんですって。
右上にチラッとだけ写っている、隈らしい簾使い。全体は、波打つような誂え。