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ごらんになりましたか

オペラ座 &ロイヤル バレエ・スプリーム(Bプロ)

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わたしたちのエトワール、ユーゴ・マルシャンのブルーバードが、半魚人のようであったこと。

海の中でゆらめく海藻のようであったこと。3部の話です。

 

パリオペの1部、ミリアムとマチアスに向かって進んでいく感じが最高だった。

 

真っ白なオニールとユーゴの「グラン・パ・クラシック」は素敵だし、

次に見るボラックとルーヴェ「ロミオとジュリエット」はもっと素敵。誰もがストーリーを想像することが可能な、うつくしくて見ごたえがあってわかりやすい演目。

 

そして頂点、マチアスに放心。やっぱり凄いのだ、この人は3部でユーゴから薔薇スーツ(半魚人になる前の登場時はユーゴが着ていた。その顔とスタイルで、立っているだけうつくしいユーゴ。ミリアムをエスコートしたりしてた)を奪うだけある。ここを目指して、人は踊るのか。

 

 

二部、「白鳥の湖」のフェデリコ・ボネッリ、詰め襟のぴったりした、濃紫の軍服ぽい衣裳が似合いすぎ。踊らずとも一挙一動王子様。考え深げで穏やか、慎ましく育ちの良いロマンティック。

スティーブン・マックレーとヤーナ・サレンコの「ドン・キホーテ」、何から書こうか…

 マックレー先輩がラスト、音楽終わったのにまだ跳んでる。さすが高いなぁ、でもできるからってそんな先輩、アドリブ長すぎですよーなんて思って面白くなってきていたら、

無音で三回跳んだ最後の着地と同時に、テープ音源の最後の一音が鳴ったこと。

先輩の踊りは、常に音楽とともにあり、すべからくけして、音を外さない。先日のAプロからいままですべてそうだった、つまりこの人は自分の滞空時間や回転スピードやなにや、全部コントロール可能な状態で踊っている。そしてこの演出をするということは、舞台上で起きるすべてをもコントロールしており、それができる自分に絶大な自信があるということ。

それを、やってやった感を一切出さずにさらっとやる。対自分における闘士で、グレードは皇帝。

 

先輩をみていると、バレエってなんだっけ…?と思う。バレエを愛して幼い頃からバレエに自分を捧げてそしてバレエからも愛されたエトワールやプリンシパルたちと、先輩はなにかちがう。

お楽しみガラとはいえこの抜き感、もうリーダーというか振付家みたいなかんじなのかな?体型のせいでみたことのない感じに見えるのかな?と思ったりもしたけれど

(そう、体型に関しては先輩、バレエの舞台では見慣れない。フィギュアスケートの女子にならいそう。

足が長いのではなく、胴がとても短い。でも頭が小さいわけじゃないから相対的に肩幅が狭くみえて、筋肉があっても華奢な感じにみえる。そしてこれまた相対的に高い位置の腰から、手足がシューッと先細りに長い。

舞台向きといえばたしかに華やか、生の舞台向き。しかしバレエ的にうつくしくないスタイルで、動画では実際に見たときの先輩の華が伝わらない。バレエスプリームのフライヤーの写真も、他の皆がうつくしいポーズの中、赤毛にそれと同系色の衣裳を着て全身オレンジの先輩はもう「次元が違う」感じにみえる。悪い意味じゃないけど、なにも知らずにみると「はてこの人はバレエに飽きているのかな?」と思うような。)

 

ネットで調べてみたら、1985年生まれの先輩、オーストラリアの出身で、趣味はモータースポーツ。パパはカーレーサー。7才からタップとバレエを習ってた。たぶん、タップの方がお好きだったらしく、フレッド・アステアジーン・ケリーに憧れて、バレエはほとんどみていなかった。ただただ、音楽に合わせてダンスするのが好きだった。

自身が大きな怪我をしたときに、ビジネスマネジメントの学位を取得して、将来はそれを使って踊り詰めで身体を壊していくダンサーの現状を変えたいと語るなど、強烈な踊り手であると同時に視点に独特の距離感がある。バレエに対して。

どんなに上手くても、身体的なハードルがべらぼうに高く、容姿で苦労することはある世界。今時たとえば仕事の場で容姿についてなにか言ったらハラスメントだ何だで問題になるけれど、バレエは容姿が仕事のうち。大きな才能。もちろん、才能がなくても天才じゃなくても、バレエを踊っていい。だけども、彼らプロの舞台は容姿で使われ方、手にする役は変わってくる。

ローザンヌからロイヤルに入ってバレエの技術を身に着けながら、その世界の常識を目の当たりにして自分に出来ることを突き詰めながら、いろんなものを見てきただろう先輩の気持ちに、2部のドンキをみて興味を持った。自然豊かで文化の遅めな土地柄で育った少年にとって、文化教養度MAXのバレエの世界は、どんなふうにうつったろう。

先輩、の呼び名は、男の子にもダンスを!というコンセプトの雑誌『Dancing』(2013年8月創刊)のバレエ漫画のモデルをやっているところから。監修もしているみたい。『バレエ・ヒーロー・ファンタジー ダンの冒険』だそうです。謎。

 

先輩の伝説、ローザンヌのコンテ 


Steven McRae - Op13

 
 

もうひとり、バレエってなんだっけ?とおもったのは、ヤーナ・サレンコ。ターミネーターのようなバレリーナ

「いつまでも止まれますけど?ほうら」「当然、いつまでも回れますけど?」

よし、回るぞ!っていう気迫ではなく、「ぶれないわたし」への信頼からでる威圧。そしてまぁ実際、微動だにしない。キトリやってもオーロラやってもおなじようっちゃおなじようなんだけど、すごい。キャラとしてはお姫様よりかがんばって御嬢、お辞儀しながら扇で仰ぐ高慢さと芸事風サービス、似合いすぎ。

マックレーとの「あらあなた次ソロね、いってらっしゃいな」「あぁ(舞台の上とはおもえないトボトボ感で位置につく先輩)」の夫婦感面白かった。

一音も外さないことが当たり前のマックレーと微動だにしない軸が当たり前のヤーナ、そしてお互いの当たり前を、当たり前に受け止めつつパートナーとして組むことを面白がっている二人。

こんなバレエははじめて見たよ。

 

ミリアムも、触発されたのかわかんないけど、オーロラでテープの曲より長く止まってた。彼女は綺羅星エトワール、品と、気迫と、繊細なその技、フランスの鏡。

バレエは技術と、表現と。どのジャンルもそうだけど、表現の幅は果てしない。

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